日本補綴歯科学会に参加してきたっていうけど補綴って何?

今年は金沢で全国大会が開催されました。
一般の方には全く聞きなれない言葉です。補綴=ほてつ と読みます。
補綴とは、歯が欠けたり、無くなった場合にクラウン(かぶせ物)や入れ歯、インプラントなどの人工物で補うことです。
日本歯科補綴学会は、この補綴(ほてつ)による治療に使う新しい材料や治療技術を開発,研究し,その治療によって,噛める,しゃべる,飲み込むといった機能の回復と見た目の自然観を回復することで健康が維持されることを通して、国民の健康長寿にさらに貢献できることを目指しています。(日本歯科補綴学会のホームページより引用)
大学を卒業してすぐ、歯科補綴学第一講座に入局し補綴学会に入りました。入った当時は年に1回の全国大会で各地に旅行に行く程度の感覚で参加していました。
独立開業してから学会に対する姿勢が自然と変わりました。
治療方法や材料は日進月歩で、学生時代にはなかった材料や治療方法があります。習っていない物は自分で学習し身につけるしかありません。メーカー主導のセミナーは、やはりメーカーの販売する材料の宣伝が主になってしまいます。
普段行っている治療が正しく行えているか、漏れはないか、の確認に学会は非常に役立ちます。年に1度の全国大会、関西支部の支部会には参加して、自分のスキルアップを図っています。
来年は横浜です。

妊婦歯科検診

妊娠中に歯がボロボロになってしまった、と言われる方があります。妊娠中に赤ちゃんのために歯からカルシウムが溶け出して歯がボロボロになる、というのは都市伝説です。そのようなことはありません。
つわりがひどく、歯磨きがあまりできなかったり、食べ物の好みが変わったり、食習慣が変わったりと、妊娠前と妊娠中で生活習慣が変化することが主な原因であり、妊娠したために歯がボロボロになるということはありません。
こんな時こそ規則正しい食事と歯磨きに十分注意を払っていただきたいと思います。
妊娠中の歯科検診が必要なことはあまり知られていないかもしれませんが、母子健康手帳には歯科検診の受診結果の記入欄があります。
かかりつけの歯科医院でしっかりと歯科検診をしてもらって口の中の健康管理も万全にしてください。
宝塚市では妊婦を対象に、口腔内診査と妊娠中におこりやすい歯の病気と予防についての保健指導を行っています。無料。
場所は口腔保健センター、時間は午後1時20分から3時30分、要予約、先着20人です。
詳細はこちら
http://www.city.takarazuka.hyogo.jp/kyoiku/kodomokenko/1000202.html
ちなみに今週の金曜日は私が当番に当たっています。

「まだ削るほどの虫歯ではないから様子を見ましょう」と言われたけど削るか削らないかの基準はなに?

日本歯科保存学会が「う蝕治療のガイドライン」という本を出していて第2版が2015年に公開されています。日本歯科保存学会のホームページでも見ることができます。
そこに「切削の対象となるのはどの程度に進行したう蝕か」という項目があります。「1〜5の所見が認められる場合は修復処置の対象となる。特に複数認められる場合は直ちに修復処置を行うことが望ましい。」とされています。
1歯面を清掃乾燥した状態で肉眼あるいは拡大鏡でう窩(虫歯の穴)を認める
2食片圧入(食べ物がいつも入り込む)や冷水痛などの自覚症状がある
3審美障害の訴えがある
4エックス線写真で象牙質層の3分の1を超える病変を認める
5う蝕リスクが高い

5のう蝕リスクが高いとは
全身的既往歴:糖衣錠の服用、口腔乾燥症を引き起こす薬剤の服用、頭頸部腫瘍の放射線治療、シェーグレン症候群、身体障害
歯科的既往:多数の修復歯の存在、頻回な再修復、一度に多数歯に及ぶ修復処置
口腔衛生状態:少ない歯口清掃回数、フッ化物を含まない歯磨材の使用、矯正装置や義歯の装着
食事:頻回な甘いお菓子や飲み物の摂取
フッ化物:フッ化物の不使用、歯磨きの未実施
唾液:唾液分泌量の低下

以上を総合的に判断して削るか削らないかを判断しています。
決して勘とか、その日の気分ではありません。

園でお話

現在、市内の野上あゆみ保育園、わかばの森保育園、宝塚南口幼稚園、逆瀬台小学校で校医、園医をさせていただいています。
写真は、園児向けに虫歯のお話をさせていただいているところです。
歯磨きももちろん大切ですが、食べ物や飲み物のリスクもかなり大きいのです。虫歯になりやすい食べ物、飲み物をお伝えして虫歯にならないためにはどの様なことに気をつけたらよいか、小さいうちから知っておいて欲しいと思っています。
「おやつってなに?」はこちら

いったいどの歯まで保険で白い歯が被せられるの?(被せ物に関して)

日本では金属でキラキラ光っている歯が未だに一般的で、健康保険で認められているものも銀色の金属が主流です。
しかし、いざ自分がそのキラキラ光る銀色を入れてもらうか?となるとやはり抵抗がありますね。笑ったら金属が見えますし・・・
自費で費用を出せば白くて綺麗な歯を入れてもらえることは一般的に知られていると思います。しかし以前「自費と保険はなぜこんなに値段に差があるのか?」に書いた通り、自費と保険は質と値段に雲泥の差があります。
とりあえず「質」は置いておいて、保険では全然白い歯ができないのか?というとそうではありません。
以下お話は単冠と言われる一本だけの歯をかぶせる場合に限ります。
ブリッジはより細かな制限がありますので当てはまらない場合がほとんどです。
前歯(右の糸切り歯から左の糸切り歯までの6本)に関しては硬質レジン前装鋳造冠という金属に裏打ちされた表面が硬いプラスチックで覆われている白い歯を作ることが可能です。裏から見ると銀色ですが、前から見た時には白色です。長年使っていただいているうちに少し黄色っぽく変色します。見た目の美しさも技工士さんの技術に左右されます。保険でできるものなのでそのへんは目をつぶりましょう。
糸切り歯より後ろの歯はどうでしょう。
第1小臼歯、第2小臼歯(前から4番目と5番目の歯)には硬質レジンジャケットクラウンと言われる、硬いプラスチックで作られた白い歯を入れることができます。プラスチックだけで作られているので時々割れることがありますが保険でできるものなので、そこは目をつぶりましょう。
また、去年からCADCAM冠といわれる硬いプラスチックの塊から削り出した冠を入れることも可能になっています。かなり硬くなっており割れることはあまりありませんが時々外れます。接着剤の問題か、削り方の問題か、材質の問題か今議論がなされているところです。
ではそれより後ろの大きな歯はどうでしょう?
大臼歯と言われる前から6番目より後ろの歯は、基本的に銀色の被せ物しか認められていません。例外は、医師により歯科用金属アレルギーと診断され主治医から文書による情報提供が歯科医院にあった場合に限りCADCAM冠といわれる硬いプラスチックの塊から削り出した冠を入れることができます。
保険で白くできるものについて記述しましたが、万人に共通ではありません。実際の治療の際には口の中の状況により適応、不適応がありますのでそれぞれの方にあった材料を歯科医院でしっかり相談して決めてください。
「保険でできる白い歯が増えます」はこちら