またまた出ました。ハンドピース未滅菌問題。

写真にあるような歯を削るハンドピースが患者さんごとに滅菌されていない!
という記事がまた読売新聞に出たようです。
当院ではすべての器具を滅菌または使い捨てです。
ハンドピースも患者さんごとに滅菌しています。
やることはきちんとやっている上で書かせていただきます。
私が勤務医の頃、ですから10年から20年前(大学病院も含めて)は感染症のある患者さんの時と1日の診療終了時のみ滅菌でその他の時はアルコール消毒するというのが一般的でした。
このハンドピースを患者さんごとに滅菌するというのは歯科医院にとってものすごく大きな経済的負担が強いられています。
ハンドピースは1本約10万円です。
「そんなに高いなら一生物でしょ?1回揃えたらずっと使えるじゃない?」と思われるかもしれませんが実は消耗品です。
当院も開業して10年になりますが何本も買い換えています。
一人の患者さんにタービン、コントラストレート、コントラアングルの3本のハンドピースを使用するのが一般的だと思います。
ハンドピースは洗浄して注油して滅菌するので一人の患者さんが終わって洗浄、滅菌が出来上がるまで約1時間かかります。滅菌が終わってすぐだとハンドピースが熱くて持てません。
小規模な歯科医院で1日20人の来院があるとします。午前中の4時間で10人の患者さんを診るとすると少なくとも18本のハンドピースがないと患者さんごとに滅菌できません。
これだけ揃えるのに180万円かかります。そして一般的な高圧蒸気滅菌を繰り返すと器具の寿命が短くなるので買い換えのサイクルが短くなります。滅菌代という診療報酬項目がないのでその費用というのはおそらく初診料、再診料に含まれているんだと思われます。
歯科は紙コップやエプロン、グローブなど使い捨てのものが多いです。それらがすべて「初再診料に含まれる」となると使い捨ての器具代や滅菌代だけで赤字になってしまうのではないでしょうか?
ちなみに基本的な歯科の初診料は2340円、再診料は450円です。(平成29年現在)
患者さんに安心して安全な診察を受けていただくのは基本中の基本だと思います。
国民皆保険を謳っている以上、国は小規模な歯科医院でも安心、安全な歯科医療を提供できる環境を整えることができるだけの診療報酬を出すべきです。
今の新聞報道は弱いものいじめを国が放置しているようにしか見えません。
この調査結果は日本歯科医師会の協力を得て厚生労働省がまとめた物ですが公表することについて厚生労働省は日本歯科医師会に全く事前連絡をしておらず、日本歯科医師会は厚生労働省に強く抗議しています。
歯科医院を叩く前に、設備費として十分な診療報酬を出さない国に問題があるわけですから国の歯科に対する姿勢を問題視してもらいたいと思います。
「グローブは患者さんごとに替えているの?」はこちら

治療計画や費用について電話で相談できる?

まずは結論から。治療計画や費用についてお電話での相談はできません。
詳しくは以下をお読みください。
内科や外科でもそうなんでしょうか?
歯科ではなぜか自分で診断して治療計画まで考えてお電話いただく方が結構いらっしゃいます。
「虫歯でかぶせないといけないと思うのですが白い歯はいくらですか?」
「しみるんですけど虫歯ではなく知覚過敏だと思うので時間はかからないと思います」
「歯石がたまってるんですけど歯石を取るのは何回くらいでいくらかかりますか?」
「歯が痛いけど応急処置だけでいいです。10分くらいで終わると思いますからすぐみてください」などなど・・・
自分で診断してしまっています。そしてその虫歯をどうするか、歯石をどうするか、治療計画そしてその治療にどれくらい時間がかかるかまで考えていただいています。
「盲腸だから切らないといけないと思うのですが手術代はいくらですか?」
「腕が痛いんですけど応急処置だけでいいので10分くらいで終わりますよね?」って病院に電話する方はあまりいらっしゃいませんよね?
今の症状については電話でお教えいただきたいです。その状態によってどれくらいの予約時間をお取りすればいいか考えます。
虫歯か知覚過敏かどうかはこちらで見せていただいてレントゲン撮影もして診断します。
その後の治療計画はかぶせるのか、つめるのか、知覚過敏処置でいいのか、診断が出てから考えます。診断の前に治療計画は立てられませんので金額を聞かれても返答に困るのが正直なところです。
歯石を取るにしても歯周病の検査をしてどれくらい歯周病が進んでいるのか、どれくらい歯石が付いているのか、歯茎の上だけなのか、歯茎の中まで付いているのか見てみないことにはわかりませんので回数も金額も正確にお伝えすることはできません。
「だいたいでいいから」と言われることもありますが、その「だいたい」が見てみないとわからないのです。
お越しいただいて自覚症状を細かくお聞きして、口の中の状態を調べて初めて診断できます。
診断があってから治療計画を立てるわけですから、費用などの様々なご相談は治療計画を立てた時、になります。
当院にいらしたことがある方であれば、カルテからある程度の予測は可能ですが、初めての方に関してお電話での治療計画や金額の相談はほぼ不可能です。
「何を考えて治療計画を立てているのか?」はこちら

学校や幼稚園、保育園の検診と歯科医院の検診は違うの?

ほとんどの学校や園の歯科検診は6月で終了していると思います。(秋に行うところもあるようですが)
この学校や園の歯科検診と歯科医院での歯科検診は似て非なるものです。
最近は学校検診でもアンケート用紙を記入してもらい検診時に提出してもらったりしていますが、何せ検診医一人が約130人を90分で診ますのでとてもみなさんのアンケートに答えられるような状況ではありません。
写真のような正規のマニュアルがありこれに則って検診は行われます。
しかし、人数と時間からも分かるように学校や園の検診は大まかなスクリーニングが目的であり細かな部分まで十分に調べて個人個人に対応できるものではありません。
学校や園の検診で指摘事項があったということは、ぱっと見で「問題あり」と判断されたわけですから必ず歯科医院で精密検査を受けていただきたいと思います。
歯科医院での検診は照明も十分で機材も揃っておりレントゲン撮影もできます。一人一人に十分時間をかけて対応できる環境が整っています。
また、ご自分では取りきれない汚れを取り除いたり虫歯予防のためのフッ素塗布を行ったりとそれぞれの方にあった予防方法をご提案することが可能です。
学校検診で問題がなくてもかかりつけの歯科医院での歯科検診はしっかり受けていただきたいと思います。