歯を白くする歯磨き粉ってどんなの?


さまざまな歯磨き粉が販売されていますが当院でお勧めしているのはブリリアントモア(ライオン)です。
ちなみに歯磨きで歯を白くするのと、ホワイトニングで歯を白くするのは根本的に別物です。歯磨き粉は歯の表面についている着色汚れをきれいにするもの。ホワイトニングは歯そのものの色を白く変えることです。
美白歯磨剤と言われるこの歯磨き粉ブリリアントモアは研磨剤で着色を取り除くのではありません。歯の表面から着色汚れを浮き上がらせる化学的ステイン除去成分「ピロリン酸ナトリウム」が配合されていますので歯の表面を傷つけずに着色汚れを取り除き白い歯をキープできるのです。
もちろん虫歯予防のためのフッ素配合です。
さて以下は化学的な話になるので「どうやって化学的に着色汚れを取るの?」ということにご興味のある方はご覧ください。
着色汚れは負に帯電しています。歯の表面のエナメル質はカルシウムイオンで正に帯電しています。着色汚れはこの正と負のイオン結合でしっかり結びついています。
ピロリン酸ナトリウムは着色汚れよりもカルシウムイオンとの親和力が強いため着色汚れに取り変わってカルシウムイオンと結びつき着色汚れを浮き上がらせるのです。
歯を着色しやすい着色性食品
コーヒー、紅茶、コーラ、ウーロン茶、赤ワイン、ブルーベリー、カレーライス、醤油、ソースなど
着色を助長する着色補助食品
炭酸飲料全般、アルコール、スポーツドリンク、柑橘系の飲食物、クエン酸、お酢、梅干等
最近、「歯を白くする歯磨き粉」で「ちょっと高すぎるんじゃない?」と思うものもありますね。
参考までにこのブリリアントモアの歯科医院での販売価格は90g 950円(税別)です。
「歯科用」となっていますがネットでも購入できるようです。

虫歯予防のガムって効果あるの?


歯の表面を覆っているエナメル質はハイドロキシアパタイトという結晶からできています。(ハイドロキシアパタイト=Ca10(PO4)6(OH)2)この結晶は酸に弱く、食事のたびにカルシウムとリン酸が溶け出します(脱灰)
この脱灰に対してカルシウムとリン酸をエナメル質に補給することを再石灰化とよんでいます。
この再石灰化を積極的に促すことが虫歯予防に重要だとされています。

当院でお勧めしているガムはPOs-Ca・F(ポスカF:江崎グリコ)です。
POs-Caはジャガイモのデンプンから得られるリン酸化オリゴ糖ですが虫歯菌は利用できないので虫歯の原因になる酸は作られません。そして歯の表面の細い隙間を通り抜けて脱灰部に浸透し再石灰化に利用されます。
また、POs-Caは高い緩衝能を発揮して口の中のpHを引き上げて脱灰を抑制します。
また緑茶エキスのF(フッ素)を配合することにより再石灰化力が増強されています。
虫歯予防用のガムPOs-Ca・Fは脱灰を抑制し再石灰化を促進する、まさに虫歯予防用と呼べるガムなのです。
顎関節症の方がガムを噛むのは禁忌ですのでご利用いただけません。「顎を鍛えるためにガムを噛む」という方がたまにいらっしゃいますが、かえって症状を悪化させますのでお控えください。

定期健診(メインテナンス)って受けた方がいいの?

悪いところを探すのがメインテナンスではありません。
メインテナンスとは「健康な人を健康に維持し、疾患のあった人がその治療を行った後に再発することなく健康を維持するために日常的に行う継続的な取り組み」です。
ですから歯科医院の定期健診は人間ドックとは少し違った意味合いを持っています。健康な口腔内を維持するために自分だけでは落としきれない、こびりついてしまったバイオフィルム(プラーク(歯垢))を取り除きます(PMTC, Professional Mechanical Tooth Cleaningと呼ばれています)。歯ブラシやフロス、歯間ブラシなどを使ったプラークコントロールの状態を再度チェックします。1年に1度は隠れた虫歯ができていないかレントゲン撮影を行って確認します(パノラマと言われる口の中全体を一度に撮る大きなレントゲンでは小さな虫歯は発見できませんので、部分的な撮影ができるデンタルやバイトウィングと言われる小さなレントゲンで確認します)。そして生活習慣に変わりがないかお聞きし、口腔内の状態によってはフッ素を塗布して虫歯予防を行います。
定期健診の間隔はそれぞれの方のお口の状態によって異なりリスクの高い方は1ヶ月に1回、リスクの低い方は6ヶ月に1回と幅をもたせています。
定期検診を受けていない方は受けている方に比べて、6年間の追跡調査でできる虫歯の数は10本以上差があるというデータもありますので定期的にメインテナンスを受けて良好な口の中の状態を維持していただきたいと思います。

「まだ削るほどの虫歯ではないから様子を見ましょう」と言われたけど削るか削らないかの基準はなに?

日本歯科保存学会が「う蝕治療のガイドライン」という本を出していて第2版が2015年に公開されています。日本歯科保存学会のホームページでも見ることができます。
そこに「切削の対象となるのはどの程度に進行したう蝕か」という項目があります。「1〜5の所見が認められる場合は修復処置の対象となる。特に複数認められる場合は直ちに修復処置を行うことが望ましい。」とされています。
1歯面を清掃乾燥した状態で肉眼あるいは拡大鏡でう窩(虫歯の穴)を認める
2食片圧入(食べ物がいつも入り込む)や冷水痛などの自覚症状がある
3審美障害の訴えがある
4エックス線写真で象牙質層の3分の1を超える病変を認める
5う蝕リスクが高い

5のう蝕リスクが高いとは
全身的既往歴:糖衣錠の服用、口腔乾燥症を引き起こす薬剤の服用、頭頸部腫瘍の放射線治療、シェーグレン症候群、身体障害
歯科的既往:多数の修復歯の存在、頻回な再修復、一度に多数歯に及ぶ修復処置
口腔衛生状態:少ない歯口清掃回数、フッ化物を含まない歯磨材の使用、矯正装置や義歯の装着
食事:頻回な甘いお菓子や飲み物の摂取
フッ化物:フッ化物の不使用、歯磨きの未実施
唾液:唾液分泌量の低下

以上を総合的に判断して削るか削らないかを判断しています。
決して勘とか、その日の気分ではありません。

インプラントを入れている人はフッ素入り歯磨き粉を使ったらだめなの?


フッ化物配合歯磨材は成人や高齢者にも虫歯予防効果があります。
最近、フッ化物配合歯磨材がインプラント周囲炎のリスクになる可能性が指摘されています。
日本口腔衛生学会誌2016年第66巻第3号に文献レビューが掲載されました。
結論から、「フッ化物配合歯磨材の利用を中止する利益はなく、中止によるう蝕リスクの増加が懸念される。」とありますので、インプラントを入れている方も特に気にすることなくフッ素入り歯磨き粉を使用して虫歯予防をがんばりましょう!
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