根管治療よりインプラントの成功率の方が高いから抜歯してインプラントにしましょうと言われた!?

時々相談されることなんですが・・・
根管治療、インプラント治療それぞれ素晴らしい治療方法です。
しかし、そもそも根管治療とインプラントを比較することに無理があります。
なぜか?
根管治療とインプラント治療は治療の目的が違うからです。
根管治療は歯を残すための治療。(虫歯治療などの保存学の一分野)
インプラントは歯がなくなった場所に歯の代わりになるものを作成する治療です。(入れ歯治療などの補綴学の一分野)
入れ歯とインプラントの治療成績を比較する、というのなら同じ分野の治療ですからまだわかりますが、
全く違う分野の治療の成功率の比較に何の意味があるのか疑問です。
根管治療ができるのであれば、まずは根管治療を行いできるだけ歯を保存する。
どうしてもダメで抜歯しなければならなくなった時にインプラントにするのかブリッジにするのか入れ歯にするのか考える。
というのが正しい順序だと思います。

インプラントも歯周病になる!?

「インプラントを入れたら一生もので歯周病にはならない」ということは決してありません。
インプラント周囲の粘膜は防御機構が十分でないため感染に弱いのです。
インプラント周囲の歯茎は普通の歯の周りの歯茎よりも防御機能が劣っている(細胞交代が3倍遅い)と考えられており、より厳密なプラークコントロール(歯磨き)が必要です。
ですから、「歯磨きするのめんどくさいし残ってる歯を全部抜いてインプラントにした方が楽じゃない?」なんて考えている方には決してインプラントはお勧めしません。インプラントはご自分の歯よりも丁寧にしっかり歯磨きし、確実に定期検診を受けていただかなければならないからです。
定期的なメインテナンスを行わなかった場合、インプラント周囲粘膜炎は発症率が増加するといわれています。よってインプラントは手術して歯が入って終わりではなくメインテナンスが極めて重要なのです。
歯周病で歯を失った方はインプラント周囲炎のリスクも高いという報告があります。
インプラントを入れた後のメインテナンスについてしっかりした説明を受けていない方も多くあるようなので注意が必要です。
インプラント周囲炎を予防するためには1にも2にもプラークコントロール(歯磨き)が重要です。
当院でインプラントをお勧めする方は当院でのブラッシング指導、歯周病治療を受けていただいた方で、しっかりしたプラークコントロール(歯磨き)ができることが確認できた方のみです。せっかくいいものを入れていただくのだからできるだけ長く快適に使用していただきたいと思います。
美味しく食べて健康に!
インプラントを入れている人はフッ素入り歯磨き粉を使ったらだめなの?」はこちら

インプラントを入れている人はフッ素入り歯磨き粉を使ったらだめなの?


フッ化物配合歯磨材は成人や高齢者にも虫歯予防効果があります。
最近、フッ化物配合歯磨材がインプラント周囲炎のリスクになる可能性が指摘されています。
日本口腔衛生学会誌2016年第66巻第3号に文献レビューが掲載されました。
結論から、「フッ化物配合歯磨材の利用を中止する利益はなく、中止によるう蝕リスクの増加が懸念される。」とありますので、インプラントを入れている方も特に気にすることなくフッ素入り歯磨き粉を使用して虫歯予防をがんばりましょう!
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フッ化物配合歯磨剤はチタン製インプラント利用者のインプラント周囲炎のリスクとなるか:文献レビュー

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