虫歯予防のガムって効果あるの?


歯の表面を覆っているエナメル質はハイドロキシアパタイトという結晶からできています。(ハイドロキシアパタイト=Ca10(PO4)6(OH)2)この結晶は酸に弱く、食事のたびにカルシウムとリン酸が溶け出します(脱灰)
この脱灰に対してカルシウムとリン酸をエナメル質に補給することを再石灰化とよんでいます。
この再石灰化を積極的に促すことが虫歯予防に重要だとされています。

当院でお勧めしているガムはPOs-Ca・F(ポスカF:江崎グリコ)です。
POs-Caはジャガイモのデンプンから得られるリン酸化オリゴ糖ですが虫歯菌は利用できないので虫歯の原因になる酸は作られません。そして歯の表面の細い隙間を通り抜けて脱灰部に浸透し再石灰化に利用されます。
また、POs-Caは高い緩衝能を発揮して口の中のpHを引き上げて脱灰を抑制します。
また緑茶エキスのF(フッ素)を配合することにより再石灰化力が増強されています。
虫歯予防用のガムPOs-Ca・Fは脱灰を抑制し再石灰化を促進する、まさに虫歯予防用と呼べるガムなのです。
顎関節症の方がガムを噛むのは禁忌ですのでご利用いただけません。「顎を鍛えるためにガムを噛む」という方がたまにいらっしゃいますが、かえって症状を悪化させますのでお控えください。

定期健診(メインテナンス)って受けた方がいいの?

悪いところを探すのがメインテナンスではありません。
メインテナンスとは「健康な人を健康に維持し、疾患のあった人がその治療を行った後に再発することなく健康を維持するために日常的に行う継続的な取り組み」です。
ですから歯科医院の定期健診は人間ドックとは少し違った意味合いを持っています。健康な口腔内を維持するために自分だけでは落としきれない、こびりついてしまったバイオフィルム(プラーク(歯垢))を取り除きます(PMTC, Professional Mechanical Tooth Cleaningと呼ばれています)。歯ブラシやフロス、歯間ブラシなどを使ったプラークコントロールの状態を再度チェックします。1年に1度は隠れた虫歯ができていないかレントゲン撮影を行って確認します(パノラマと言われる口の中全体を一度に撮る大きなレントゲンでは小さな虫歯は発見できませんので、部分的な撮影ができるデンタルやバイトウィングと言われる小さなレントゲンで確認します)。そして生活習慣に変わりがないかお聞きし、口腔内の状態によってはフッ素を塗布して虫歯予防を行います。
定期健診の間隔はそれぞれの方のお口の状態によって異なりリスクの高い方は1ヶ月に1回、リスクの低い方は6ヶ月に1回と幅をもたせています。
定期検診を受けていない方は受けている方に比べて、6年間の追跡調査でできる虫歯の数は10本以上差があるというデータもありますので定期的にメインテナンスを受けて良好な口の中の状態を維持していただきたいと思います。

「まだ削るほどの虫歯ではないから様子を見ましょう」と言われたけど削るか削らないかの基準はなに?

日本歯科保存学会が「う蝕治療のガイドライン」という本を出していて第2版が2015年に公開されています。日本歯科保存学会のホームページでも見ることができます。
そこに「切削の対象となるのはどの程度に進行したう蝕か」という項目があります。「1〜5の所見が認められる場合は修復処置の対象となる。特に複数認められる場合は直ちに修復処置を行うことが望ましい。」とされています。
1歯面を清掃乾燥した状態で肉眼あるいは拡大鏡でう窩(虫歯の穴)を認める
2食片圧入(食べ物がいつも入り込む)や冷水痛などの自覚症状がある
3審美障害の訴えがある
4エックス線写真で象牙質層の3分の1を超える病変を認める
5う蝕リスクが高い

5のう蝕リスクが高いとは
全身的既往歴:糖衣錠の服用、口腔乾燥症を引き起こす薬剤の服用、頭頸部腫瘍の放射線治療、シェーグレン症候群、身体障害
歯科的既往:多数の修復歯の存在、頻回な再修復、一度に多数歯に及ぶ修復処置
口腔衛生状態:少ない歯口清掃回数、フッ化物を含まない歯磨材の使用、矯正装置や義歯の装着
食事:頻回な甘いお菓子や飲み物の摂取
フッ化物:フッ化物の不使用、歯磨きの未実施
唾液:唾液分泌量の低下

以上を総合的に判断して削るか削らないかを判断しています。
決して勘とか、その日の気分ではありません。

インプラントを入れている人はフッ素入り歯磨き粉を使ったらだめなの?


フッ化物配合歯磨材は成人や高齢者にも虫歯予防効果があります。
最近、フッ化物配合歯磨材がインプラント周囲炎のリスクになる可能性が指摘されています。
日本口腔衛生学会誌2016年第66巻第3号に文献レビューが掲載されました。
結論から、「フッ化物配合歯磨材の利用を中止する利益はなく、中止によるう蝕リスクの増加が懸念される。」とありますので、インプラントを入れている方も特に気にすることなくフッ素入り歯磨き粉を使用して虫歯予防をがんばりましょう!
詳しく知りたい方はこちら
フッ化物配合歯磨剤はチタン製インプラント利用者のインプラント周囲炎のリスクとなるか:文献レビュー

インプラントも歯周病になる?」はこちら

おすすめ歯ブラシ

薬局やスーパーに行くとたくさんの歯ブラシが並んでいます。

いったいどれを買ったらいいんだろう?あまりの多さに悩んでしまいませんか?

私が一番気に入っているのはTePe X-SOFTです。

予防大国スウェーデンの歯ブラシで見た目はごついですがすごく磨きやすい歯ブラシです。

密度の高い歯ブラシの毛と十分なコシ。ブラシの先さえうまく当たればどんな持ち方でも綺麗に汚れが取れてしまいます。

私がこの歯ブラシに出会ったのは開業する前ですから今から10年以上前です。当時、奥羽大学の教授だった岡本浩先生が宝塚に歯周病の講演に来てくださいました。岡本先生は歯周病の世界的権威スウェーデンのイエテボリ大学のLindhe先生のもとで学ばれた歯周病の専門家です。Lindhe先生の臨床歯周病学という本の監訳もされています。

その講演会のとき「歯ブラシはどのようなものがいいですか?」と質問して教えていただいたのがこの歯ブラシです。

それまでは別の歯ブラシを主に使用していたのですが一度使ってみると使い易さ、歯茎への当たり具合、今までのものとは全く違いました。

即この歯ブラシを患者様にもお勧めするようになりました。

現在も色々なメーカーから様々な歯ブラシが出ていて、サンプルをいただいて試してみるのですがやっぱりTePe X-SOFTに戻っています。

今では一番のお気に入りで、皆さんにこの歯ブラシをお勧めしています。