拡大鏡をつけている歯医者なんてあんまり見かけないけど何か意味あるの?

私が拡大鏡をつけるようになったのは開業して2年目くらいですから平成19年です。当初は2.5倍の拡大鏡を使用していました。
使用のきっかけは拡大鏡を使用すると治療中の姿勢が正しくなり疲れにくくなることと大きくはっきり見えるので治療の精度が上がるから、ということでした。
2.5倍の拡大鏡を使用し始めた時はよく見えて治療がさらに楽しくなったのを覚えています。しかし5年ほど経つと物足りなさを感じ始めました。歯の神経の治療をする時は歯の根の中は非常に暗く歯の根の先の方は見えません。神経の穴が細く見落とすこともあります。
昔は「見えないところは心眼で見るんや」と言われたものですが見ることができるならはっきり見て治療したい!
そういう思いから現在は6倍の拡大鏡を使用しています。
2.5倍から6倍に変えた時、治療の世界観が変わりました。
今まで見えていなかったものがはっきり見えます。見えるから治せます。
心眼で見てたって治りません(笑)
根の先まではっきり見えるように拡大鏡にLEDライトも装着しています。私のライトの明るさは70000ルクスで最大光量にすると根の先まで見えます。
開業当初は「拡大鏡とか顕微鏡とか使っている奴はええかっこしいのアホや」
とか「あんなもん使わんでもちゃんとやれば治るわ」とか言う方もいて、拡大鏡をつけている方がバカにされるような風潮もありました。
今でも拡大鏡を学校検診などに持っていくと他の検診医に「そんなもん持ってこんでもええのに」というような冷めた目で見られることがあります。しかし、拡大鏡に慣れてしまうと裸眼で見ることが不安で仕方がないのです。見えている気がしません。
拡大鏡をまだつけていない頃に一生懸命治療した歯に問題が起こり再治療を行うことがあります。
6倍の拡大鏡をつけている今、その歯の治療をしている時「あの頃これは見えなかったからうまくいかなかったんだろうな」と感じます。
「拡大鏡をつける」ということは治療のクオリティを高めることで「ええかっこ」しているのではありません。
裸眼では見えなかった虫歯も見えます。レントゲンでもはっきりしないし、削ろうかな、どうしようかな、というような虫歯も拡大鏡だとはっきり見えるので治療にためらいはありません。
今では拡大鏡なしの治療なんて考えられませんし、裸眼では治療できません。なぜなら裸眼だと見えている気がしないからです。決して目が悪いからではありません。眼鏡の度はちゃんと合っています(笑)
裸眼で治療することは私にとっては「普段拡大鏡で見ている6分の1の大きさで見ている」、ということなのです。はっきり言って見えていないに等しい大きさになってしまいます。
想像してみてください、今見ているテレビの大きさが6分の1になったら・・・
40インチのテレビだと7インチくらいの大きさになってしまうのです。例えば40インチのテレビを修理に出した時、「修理が終わるまでこれ使ってください」と言って7インチのテレビを置いて行かれたらどうですか?
「こんなちっちゃいテレビ見えるかい!」という感じじゃないでしょうか?それと同じ感覚です。
私の場合7インチを使っていて14インチに上げて、今は40インチを毎日見ているという感覚です。急に7インチに戻せと言われても無理なんです。
拡大鏡や顕微鏡を使用して診断、治療するということは治療のクオリティを高める上でなくてはならない必須のアイテムなのです。
「ミクロの世界」と「歯の治療」の意外な関係はこちら
「歯科用ルーペ(拡大鏡)について」はこちら

いったいどの歯まで保険で白い歯が被せられるの?(被せ物に関して)

日本では金属でキラキラ光っている歯が未だに一般的で、健康保険で認められているものも銀色の金属が主流です。
しかし、いざ自分がそのキラキラ光る銀色を入れてもらうか?となるとやはり抵抗がありますね。笑ったら金属が見えますし・・・
自費で費用を出せば白くて綺麗な歯を入れてもらえることは一般的に知られていると思います。しかし以前「自費と保険はなぜこんなに値段に差があるのか?」に書いた通り、自費と保険は質と値段に雲泥の差があります。
とりあえず「質」は置いておいて、保険では全然白い歯ができないのか?というとそうではありません。
以下お話は単冠と言われる一本だけの歯をかぶせる場合に限ります。
ブリッジはより細かな制限がありますので当てはまらない場合がほとんどです。
前歯(右の糸切り歯から左の糸切り歯までの6本)に関しては硬質レジン前装鋳造冠という金属に裏打ちされた表面が硬いプラスチックで覆われている白い歯を作ることが可能です。裏から見ると銀色ですが、前から見た時には白色です。長年使っていただいているうちに少し黄色っぽく変色します。見た目の美しさも技工士さんの技術に左右されます。保険でできるものなのでそのへんは目をつぶりましょう。
糸切り歯より後ろの歯はどうでしょう。
第1小臼歯、第2小臼歯(前から4番目と5番目の歯)には硬質レジンジャケットクラウンと言われる、硬いプラスチックで作られた白い歯を入れることができます。プラスチックだけで作られているので時々割れることがありますが保険でできるものなので、そこは目をつぶりましょう。
また、去年からCADCAM冠といわれる硬いプラスチックの塊から削り出した冠を入れることも可能になっています。かなり硬くなっており割れることはあまりありませんが時々外れます。接着剤の問題か、削り方の問題か、材質の問題か今議論がなされているところです。
ではそれより後ろの大きな歯はどうでしょう?
大臼歯と言われる前から6番目より後ろの歯は、基本的に銀色の被せ物しか認められていません。例外は、医師により歯科用金属アレルギーと診断され主治医から文書による情報提供が歯科医院にあった場合に限りCADCAM冠といわれる硬いプラスチックの塊から削り出した冠を入れることができます。
保険で白くできるものについて記述しましたが、万人に共通ではありません。実際の治療の際には口の中の状況により適応、不適応がありますのでそれぞれの方にあった材料を歯科医院でしっかり相談して決めてください。
「保険でできる白い歯が増えます」はこちら

このあいだ他の歯医者さんでもレントゲン撮ってもらったばっかりなのにまた撮っても大丈夫?

歯科治療のレントゲン撮影は安全です。
歯科治療で撮影されるデンタルレントゲン写真(口の中にフイルムを入れて撮影する小さなもの)1枚の放射線量は約0.01mSv、パノラマレントゲン写真(口の中全体を撮影する大きなもの)は約0.03mSvです。
一方、1年間の日本人の自然放射線は平均1.5mSvで歯科のレントゲン撮影の放射線量は非常に少ない量であることがわかります。
歯科においてレントゲン撮影は診断、治療に不可欠なもので重要な情報をそこから得ることができます。他院で撮影されていても、そのデータが手元になければ自院で必ず撮影します。その放射線量は極めて微量ですから健康被害を起こすことはありません。
ガンの発生を心配される方もいらっしゃいますが、200mSv以上の大量の放射線を約1時間で被爆した人にはガンが発生する可能性があることがわかっています。その発生割合は放射線量の増加とともに増加します。
200mSv未満の少量の放射線でガンが発生するかどうかは明らかになっていません。
1時間で200mSvというと、デンタルレントゲン撮影であれば1時間に2万枚撮影するとガンが発生する可能性がある、という数字です。ですから通常撮影する歯科のレントゲン撮影に過敏になる必要はないと思います。必要なレントゲンを必要な枚数撮影し、しっかりとした診断を行い、確実な治療をする。これにより皆さまに美味しく食べて健康にすごしていただくことができると考えています。

ホワイトニングってどんなことするの?

マウスピース
ホワイトニングとは歯を削らずにご自分の歯そのものを白く・明るくすることです。
打撲によって変色した歯も、ある程度白くすることができます。
コーヒーや紅茶、ウーロン茶、赤ワインなどで歯についた茶渋をとったりするのは我々がよぶホワイトニングとは別物で、ステイン除去といいます。
すでに被せてあるものを白いものに作り替えたりすることもホワイトニングとは言いません。
ホワイトニングは歯を削らずにご自分の歯を白くするものですので、詰め物や被せてあるものを白くすることはできません。詰め物や被せてあるものはホワイトニングが終わってから白くなったご自分の歯の色に合わせて作り変える場合があります。
年齢的に少し黄ばんできた歯を白くするのはすごく綺麗に白くできます。子供の頃に飲んだ薬などが原因で歯が変色している場合はある程度白くできます。歯に詰めている金属の色が歯に移って黒くなってしまっているものはホワイトニングできません。
ホワイトニングができない方は

  • 18歳未満の方
  • 妊産婦、授乳中の方
  • 漂白剤やラテックスアレルギーの方
  • 健全でない歯
  • 知覚過敏のある方
  • 重度の歯周病の方
  • 金属素材による変色
  • 無カタラーゼ症

などです。
ホワイトニングには歯科医院内で行うオフィスブリーチングと、自宅で行うホームブリーチングがあります。
当院では以前、両方を合わせて行うコンビネーションブリーチングを実施しておりましたが、ホームブリーチングのほうが十分に白く透明感のあるホワイトニングができるようになりましたので現在はホームブリーチングのみ実施しております。
ホームブリーチングは写真のようなトレーを作成し、白くしたい歯の部分にホワイトニング用のジェルを入れて寝ている間、トレーを口の中に入れておいていただき歯を白くしていくものです。
ジェルは1週間で1本使用し、4週間続けていただくことで透明感のある白い歯を取り戻していただくことができます。
実際の方法は下記の動画をご覧ください。(コンビネーションホワイトニングの動画になっております)

治療中に予想される不具合としては知覚過敏が起きることが最も多いです。ジェルがしみます。その場合は毎日ジェルを入れるのを2、3日に1回にしてもらったりMIペーストという歯磨き粉をジェルの代わりに入れてもらったりして知覚過敏を防ぎます。
初めから知覚過敏の症状のある方にはシュミテクトという歯磨き粉をしみる部分に塗り込んでもらい、しみないようにしておきます。
その他の不具合として、歯ぎしりやくいしばりの強い方ではトレーに穴が開くことがあります。穴が開くとジェルがそこから漏れてしまいますので穴が開いた部分を厚めにしてトレーを作り替えます。
虫歯や歯周病がある方は基本的に治療が終了してからホワイトニングを開始します。
ホワイトニング効果の持続は以前は3ヶ月くらいと言われていましたが現在は1年くらい持続します。一度ホワイトニングしてしまえば今後は気になった時に一晩ジェルを入れてトレーをはめていただければ1回でホワイトニング後の白さまで一気に戻ります。
治療費はトレー5千円、ジェル1本5千円×4本で合計2万5千円(税別)です。上下する場合は5万円(税別)です。(医院によって異なります)
当院ではほとんどの方に、上をまずやって下もやるかどうか考えてもらうようにしていますので上下同時に進めることはまずありません。
詳細は人により異なりますのでご相談ください。

保険と自費はなぜこんなに金額の差があるのか?

「自費が高すぎる」と言われることがありますがそれは違います。
保険が安すぎるのです。
保険診療の金額は国が値段を決めた診療報酬です。
医療費全体のうち歯科がもらえる額は約7%です。残り93%は医科ですので歯科医療費はほとんど予算がないというのが現状です。
予算がない中で診療報酬を決めているので、材料などは診療報酬で決められた金額が我々の仕入れ値の原価割れをおこしていることもしばしばあります。
今年の1月から「ファイバーポスト」という良い材料が保険でも使用できるようになると聞き喜んでおりましたが、決められた金額を見て愕然としました。
ファイバーポストの定価は1本1000円(税別)ですが国が決めた我々が請求できる金額は890円です。完全に原価割れですね。これは定価の2割引が販売価格だろうということで決められているようですが、800円(税別)で仕入れたとしても税込864円です。なんと原価率97%!ありえません。
仕入れ値で販売している小売業の方っていらっしゃいますか?
せっかく良い材料が開発され保険で使えるように認められても原価割れするような値段をつけられたら誰も使いません。
金属の被せ物も原価率は約80%です。
歯科医療はひとりひとりの方に手作業でオーダーメードの治療をご提供しています。この世に手作りのオーダーメードで原価率が80%なんてものが存在するでしょうか?
保険診療ではこのような原価割れが多々あります。その分は我々の持ち出しになってしまうためできるだけ安い材料を使おうとします。当然、精度は落ちます。できるだけ安く作ってくれる技工士さんに作ってもらおうとします。技術は二の次になってしまいます。時間をかければかけるほど赤字になるので早く一人の方を終わらせなければなりません。薄利多売にならざるを得ないのです。
「保険で良いものを」と頑張っておられる先生もいらっしゃいますが、かなり難しいです。というか無理ではないでしょうか。「保険の範囲内で良いものを」というのであれば話はわかります。
口は人の体の入り口です。口の中が健康になることで体全体が健康になることは証明されているのに健康保険では口の中の健康に予算を分けてくれません。この国は国民の健康についてどれだけ真剣に考えているのか疑問に思うこともあります。
消費税が上がって医療費も上げてくれるのかと思いきやどうもそうではなさそうです。歯科においては「保険で良いものを」というのは夢の話ですね。
自費は原価割れするような値段設定は当然していません。
学会やセミナーなどにしっかり参加して知識と技術を研鑽し、ひとりひとりの方としっかりと向き合い、時間をかけて良い技術と良い材料を使用し、技術の高い技工士の方に作ってもらう、そうなると自ずと費用は高くなってしまいます。
大半が愚痴になってしまいましたが、自費が高いのではありません。保険が安すぎるのです。